明日香川 しるべなきつつ闇であらば 冷酷なる星でもすがりたくなるは 人の性か 例え指し示す方向が破滅への道だとしても だが 為設しもうかれた唯一の導きなど ――欲しくはない 光強くなれば闇くなるは道理 日影と日陰 陽光と陰影 そのものの如しと思っていた 身を貫いたのは溢れた世論 心をつらぬいたのはあふれた世情 気の迷いだと 入り穿ほがだと そう 思いたかった 石焔いそのほむらを見るようで その胸中は量れず 目にするものが全てではない そう分かっていた筈だった 開いた目が痛むのは 戦乱の風塵の所為 開いた眼が悼むのは地に伏す罪無き者々 ・・・・・・その罪 我が罪状に全て書き連ねられよ 哀れみが過ぎた先には つつまふだけの定めがあった 己が出来たことは 唯一つ 情を籠め据えることだけだった 仰いだ青天が寒天のように見える 春であるはずなのに 抜け行く烈風 ひひり翻弄される塵 それは あたかも我が身のようで・・・・・・ どんなに忌み嫌っても 関係が切れるわけでもなく どんなにしきと思えども 関係が変わるわけもない そして これ・・が兄上、貴方の答えなのですね



--------------------------------------------------------------------------------  六波羅探題攻めの少し前からの足利直義視点。  3段目の「つらぬく」は手偏に侖。